憩う神楽坂、私を人休み

神楽坂のこと

旅館「和可菜」にまつわる本と神楽坂の今昔について。

このメディア「ikofu」をより面白くしていくには神楽坂についてもっと深く「知る」ことが手っ取り早いのではないか?ということで一冊の本を買って読んでみることにした。

どんな本をまず最初に読めばいいのだろう・・ということでGoogleで「神楽坂」「本」の2ワードで検索をしてみた結果、いくつか候補があがった。神楽坂を舞台にした小説とか色々あるなかで本を選ぶ基準となったのが事実にもとずているかどうか?で、そうなると物語ではなく実際にあった話や史実となる。

GoogleだけでなくAmazonでも検索をしてみると「神楽坂の親分猫」という本が目を引いたので詳細を見てみると・・なるほど、実際に神楽坂に存在している(この本が書かれた時点では)旅館にまつわる内容ということで、物語ではなくエッセイのような本ということでこれを最初に読んでみることにした。

神楽坂の親分猫と名旅館「和可菜」について

当然のことながら神楽坂に「和可菜」という旅館があることは知らなかった。しかし、この旅館で映画「男はつらいよシリーズ」や「たそがれ清兵衛」などの構想や脚本が書かれたというのだから俄然興味は深まる。

昭和初期の女優、木暮 実千代がオーナーで妹さんが女将となってこの旅館を切り盛りしていたそうだ。実際にその旅館(跡地)に行ってみて驚いた。入り組んだ裏路地に石畳の道、日本瓦の家に垣根があって、そこだけ昭和の風景が取り残されていた。

「神楽坂の親分猫」は和可菜で飼われていた黒猫の目線で書かれている。

たいそうな猫好きだった女将さんが何匹も猫や犬を旅館で飼っており、この本の主役である黒猫は旅館が晩年に差し掛かった頃に可愛がられていたらしい。当時、この旅館で缶詰になって執筆をしていた有名な映画監督や脚本家さんたちのこと。神楽坂の街の様子、近所付き合いや、猫についてユーモアたっぷりで書かれた内容。

そして、粋な江戸文化が残るこの界隈ではあったが時代の流れと共に開発が進み、まったく粋ではない高層マンションの建設に反対をしている件も書いてある。

実際に和可菜に訪れてみると当時と変わらない風景がそこにはあった。

しかし、少し顔を上げてみると巨大な高層マンションが見下ろしており正直とても残念な気持ちになった。これも時代の流れなのだから仕方ないと思いつつも高層マンションの存在が神楽坂という街の価値を大きく落としてしまっていると感じてしまうのは僕だけではないはずだ。

仮に昭和初期〜中期の風景が残ったままの神楽坂であったなら今以上の人々がこの街に訪れてたくさんの買い物をしていくに違いないだろう。僕が住んでいる埼玉には川越という街があって通称「小江戸」と呼ばれているのだけど、古い建物が今も数多く残り、それを目当てに週末ともなると原宿の竹下通り(全盛期の)なみの人混みになっている。

金儲けのために高層マンションを建てたために、その場所の価値を低くして結果的に街の経済が衰退していく・・そんな負のスパイラルに東京の街全体が陥っているように思える。

とは言え、時代の流れを大きな視点で見てみると古さをどんどん捨てて変化していくことが日本という国のスタンスであることは歴史を見ると理解はできる。日本そのものが経済も含めて迷走している現在は不調和な時代であって、その表れが神楽坂には不似合いな高層マンションなのだろう。

不調和のあとに調和の時代が来るのであれば、例えば隈研吾氏の設計によって生まれ変わった赤城神社のように、人間が生み出す経済活動と自然界の調和が取れた街がいずれ出現すると思う。旅館和可菜が同じく隈研吾氏によってリノベーションされオーベルジュ(宿泊ができるレストラン)として生まれ変わるらしい。

故・木暮 実千代さんや女将さんはあの世で大変驚いていると思う。

そしてこの旅館で長く生きた黒猫も。

混沌としたこの現代に建築を通してバランスをもたらそうとしている氏のデザインは個人的に好きなのである。

不調和から調和へのトランジションが今の神楽坂なのだ。

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Kazuaki TANI

Kazuaki TANI

GANAPATI create代表 / ikofu ディレクター

奥秩父の入り口に位置する高麗エリアへ移住し田舎暮らしをしながら「未来へつながる豊かさの探求」をテーマに地域活動やメディアで発信をしている。旅と瞑想と料理が趣味。本業はWEBディレクターとしてHP制作とWEB集客のサポート。

  1. 旅館「和可菜」にまつわる本と神楽坂の今昔について。

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